
歌や楽器の音を編集していると、よく目にするのが「EQ」という言葉です。
MIXを始めたばかりの人の中には、
「EQを使うと音がよくなるらしいけれど、何をすればいいのかわからない」
「つまみがたくさんあって難しそう」
「適当に動かしたら、逆に音が変になってしまった」
という人も多いのではないでしょうか。
今回はEQについて詳しく解説していこうと思います
難しそうに見えますが、基本的な役割を理解すれば、初心者でも少しずつ使えるようになります。
EQとは?
EQは「イコライザー」の略です。
音に含まれている低い音、中くらいの音、高い音を、それぞれ大きくしたり小さくしたりするために使います。
たとえば、声を録音したときに、
- 耳に刺さるような音がする
- 音がこもって前に出てこない
と感じることがあります。
このような音の悩みを、周波数ごとに調整して整えるのがEQです。
周波数って何?
音には「高い音」と「低い音」があります。
この音の高さを、数字で表したものが周波数です。単位には「Hz(ヘルツ)」が使われます。
数字が小さいほど低い音、数字が大きいほど高い音になります。
たとえば、低い音には声の太さや重さが含まれています。中くらいの音には声らしさや言葉の聞き取りやすさが含まれ、高い音には明るさや空気感が含まれています。
EQでは、この周波数を見ながら、必要な音を残したり、気になる音を抑えたりします。
EQは「音をよくする魔法」ではない
EQを使えば、どんな音でもきれいになるわけではありません。
録音時点で音が割れていたり、部屋の反響が大きく入っていたりすると、EQだけで完全に直すことは難しくなります。
EQの役割は、もともとの音を別の音に作り変えることではなく、音の中にある不要な部分を整理して、必要な部分を聞こえやすくすることです。
EQでできること
音のこもりを減らす
声がモコモコしていたり、伴奏に埋もれていたりするときは、低音から中低音が多すぎる可能性があります。
その部分を少し下げることで、声がすっきりと聞こえることがあります。
耳に刺さる音を抑える
声がキンキンして聞こえたり、「さ行」が痛く感じたりする場合は、高い音の一部が強すぎる可能性があります。
気になる周波数を少し下げることで、聞きやすい音に近づけられます。
声を明るくする
声が暗く、奥に引っ込んで聞こえるときは、中高音から高音を少し持ち上げることで、明るさや存在感を加えられる場合があります。
ただし、上げすぎると耳に刺さる音になるため、少しずつ調整することが大切です。
楽器同士の音を整理する
MIXでは、ボーカルやギター、ピアノ、ベースなど、さまざまな音が同時に鳴ります。
それぞれの音が同じ周波数に集中すると、お互いにぶつかって聞き取りにくくなります。
EQを使って音の重なりを整理することで、ボーカルや楽器がそれぞれ聞こえやすくなります。
ブーストとカット
EQでは、特定の周波数を上げることを「ブースト」、下げることを「カット」と呼びます。
音を明るくしたいときなどはブーストを使いますが、初心者のうちは、まず不要な音をカットすることから始めるのがおすすめです。
足りない音をどんどん足していくよりも、邪魔になっている音を少し減らしたほうが、自然に音を整えやすいからです。
ただし、カットしすぎると声が細くなったり、不自然になったりします。
大きく変えるのではなく、音を聴きながら少しずつ調整しましょう。
EQの基本的な使い方
まずは、調整したい音をよく聴きます。
「なんとなく音が悪い」と考えるのではなく、
「少しモコモコしている」
「高い音が耳に刺さる」
というように、気になる部分を具体的に探します。
次に、EQで気になる周波数を探します。
周波数を一時的に大きく上げながら動かすと、モコモコした音や痛い音が強く聞こえる場所を見つけやすくなります。
場所を見つけたら、上げていた部分を元に戻し、今度は少しだけ下げます。
最後に、EQをかけた状態とかけていない状態を聴き比べます。
音量が大きくなると、それだけで音がよくなったように感じることがあります。できるだけ同じくらいの音量で比較することが大切です。
初心者が気をつけたいこと
数字だけをまねしない
インターネットで調べると、
「ボーカルはこの周波数を下げる」
「この部分を上げると声が抜ける」
といった情報が見つかります。
しかし、声質やマイク、録音環境によって必要な調整は変わります。
書かれている数字をそのまま使うのではなく、自分の耳で確認しながら調整しましょう。
一度に大きく動かさない
EQの変化がわかりにくいからといって、大きく上げ下げすると、不自然な音になりやすくなります。
まずは少しだけ動かし、変化を確認することが大切です。
ソロの音だけで判断しない
ボーカルだけを聴くときれいでも、伴奏と合わせると埋もれてしまうことがあります。
反対に、ボーカルだけでは少し細く感じても、伴奏と合わせるとちょうどよく聞こえる場合もあります。
最終的には、必ず曲全体を流しながら確認しましょう。
EQを使わない選択肢も持つ
音に問題がなければ、無理にEQを使う必要はありません。
「MIXでは必ずEQをかけなければならない」と考えるのではなく、必要なときだけ使うことが大切です。
まとめ
EQは、音に含まれる低音・中音・高音のバランスを調整するための機能です。
音のこもりを減らしたり、耳に刺さる部分を抑えたり、ボーカルと楽器の重なりを整理したりするときに使います。
最初から細かい周波数を覚える必要はありません。
まずは、
「低い音が多すぎないか」
「こもって聞こえないか」
「耳に刺さる音がないか」
「伴奏の中で声が聞こえるか」
という点を意識してみましょう。
EQは、正解の数値を入力する作業ではありません。
実際の音を聴きながら、必要な部分を少しずつ整えていく作業です。何度も聴き比べるうちに、少しずつ音の違いがわかるようになります。