
ハリウッド式ボイストレーニングでは、低音から高音へ移動するときの声の使い方を、大きく4つのボイスタイプに分類します。
- プルチェスト
- ライトチェスト
- フリップ
- ミックス
ここでいう「ボイスタイプ」とは、声質の種類や、テノール・ソプラノといった音域の分類ではありません。
高い声を出そうとしたときに、声がどのような動きをしやすいかを表したものです。
また、一人の声が完全にどれか一つへ分類されるとは限りません。「低音ではライトチェスト気味、高音ではフリップしやすい」というように、複数の特徴を持っていることもあります。
1.プルチェスト
プルチェストとは、地声の感覚を強く保ったまま、高音まで無理に引っ張り上げてしまうタイプです。
英語の「Pull」には、「引っ張る」という意味があります。
主な特徴
- 高音になるほど声を張り上げる
- 首や喉に力が入りやすい
- あごが上がりやすい
- 高音で音程が届かない
- 歌い終わると喉が疲れる
- 裏声が弱い、または出しにくい
地声が強い人や、大きな声を出すことに慣れている人に見られやすい傾向です。
低音では力強く歌えますが、そのままの状態で高音へ進もうとすると、声帯や喉の周辺に余計な力が入りやすくなります。高音で喉頭が上がり、苦しさや音程の不安定さにつながることもあります。
2.ライトチェスト
ライトチェストとは、地声の成分が弱く、低音から声が軽くなりやすいタイプです。
「ライト」という名前のとおり、全体的に軽く、柔らかい声に聞こえます。
主な特徴
- 地声に厚みや力強さが出にくい
- 低音でも息っぽい声になりやすい
- 声量を上げるのが苦手
- 高音は比較的出しやすい
- 歌声が細く、弱く聞こえやすい
プルチェストとは反対に、声を重く使う感覚が少ないタイプです。
高音は出しやすい場合がありますが、地声に必要な声帯の閉じ方が弱いと、息が多く漏れ、声に芯が生まれにくくなります。
3.フリップ
フリップとは、ある高さを境にして、地声から裏声へ急に切り替わってしまうタイプです。
低音では地声で歌えていても、高音へ進む途中で声がひっくり返り、急に弱くなったように聞こえます。
主な特徴
- 地声と裏声がはっきり分かれている
- 高音で声が急に細くなる
- 声がひっくり返りやすい
- 音域によって音量や声質が大きく変わる
- 裏声では歌えるが、力強さを出しにくい
地声と裏声の両方を出せていても、その間を滑らかにつなぐことが苦手な状態です。
地声から裏声へ移る部分では、声帯の使い方を少しずつ変化させる必要があります。フリップタイプは、その変化が急激に起こるため、声が二つに分かれて聞こえやすくなります。
4.ミックス
ミックスとは、地声と裏声の働きがバランスよく使われている状態です。
低音から高音まで声が大きく途切れず、音域が上がっても、喉に過度な力を入れずに歌いやすくなります。
主な特徴
- 地声から裏声への変化が滑らか
- 高音でも喉が苦しくなりにくい
- 音域による声量の差が少ない
- 高音にも声の芯がある
- 小さな声から力強い声まで調整しやすい
- 長く歌っても疲れにくい
ミックスボイスは、地声と裏声の間にまったく新しい声があるというよりも、両方の働きをバランスよく組み合わせた状態として説明されます。
ハリウッド式ボイストレーニングでは、プルチェスト、フリップ、ライトチェストといった発声の偏りを整え、ミックスの状態へ近づけていくことが大きな目標の一つです。
ただし、ミックスは一度習得すれば完成というものではありません。曲の高さや音量、母音、表現によって声のバランスは変わるため、その都度適切に調整する必要があります。
4つのタイプを簡単に比較すると
| ボイスタイプ | 声の傾向 | 起こりやすい悩み |
|---|---|---|
| プルチェスト | 地声が強すぎる | 高音を張り上げる、喉が苦しい |
| ライトチェスト | 地声が軽く弱い | 声量や声の芯が出にくい |
| フリップ | 地声と裏声が分かれる | 声がひっくり返る |
| ミックス | 地声と裏声のバランスがよい | 音域を滑らかにつなぎやすい |
ボイスタイプを知る目的
ボイスタイプを知る目的は、自分の声に名前をつけて決めつけることではありません。
大切なのは、現在の発声にどのような偏りがあり、どのような練習が必要なのかを判断することです。
例えば、プルチェストの人が地声を強くする練習ばかり行うと、張り上げがさらに強くなる可能性があります。反対に、ライトチェストの人が声を軽くする練習ばかり行うと、さらに声の芯が失われることがあります。
同じ「高音が出ない」という悩みでも、その原因は人によって異なります。
自分のボイスタイプに合った練習を選ぶことが、無理なく歌声を成長させるための第一歩です。